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2017年6月30日 (金)

■裾野に根付く~甲州・昇仙峡ぶらり旅・その四~ -更新第1131回-

2017年のGW、オッサン3人で行く甲府・昇仙峡と忍野八海の旅。
第4回……。
ようやく2日目。
景色はいいけど、イベントはもうそんなにないです。
今回でおしまい。ちょっと長いけど。

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お宿・菊富士のメルヘンなお庭にて。



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■■■━ 2日目 ━■■■
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■2日目:朝 ホテル菊富士を出発し、忍野八海へ


2日目、決まっているのは
  ・忍野八海に行く
  ・道志みちを通り、途中、道志の湯で風呂を浴びて帰る
ということくらいで、朝メシをどこで食らうかということすら決まる前から
クルマは走り出してしまいました。
「どこか目についたところで入れそうな店にでも入りましょう」
という言葉も虚しく、車窓の風景は走り出してものの数分で人里から草原へと変わっていったのです。
合掌。
いやー、甲府、ひらけているように見えて、ひらけ過ぎ。
フルオープン。田舎。あっという間に野原だもの。

結局、朝食はお店を見つけることなど出来ず、
山がちな日本の国土が育んだ神がかりな流通網の申し子、
すなわちコンビニエンスストアさんの力を借りて眺めの良い場所でいただいた。
コンビニさんはすごいぜ……感動的です。
本当に、コンビニがなかったら私たちの旅は一体どうなってしまうのかというくらい、
水分の確保と言い、トイレと言い、コンビニさんへの依存度が高い。

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  コンビニ無し・カーナビ無しの縛りで旅をしてみる、というのはどうだろうか?
  いったいどんな気分が味わえるのでしょうか……。
  20年前、30年前、40年前の旅とは、はたしてどんな姿をしていたのでしょう。
  残念ながら、その当時まだ子供だった自分は、本当の意味でのその姿を知りません。
  うちには車もありませんでしたし、そんなに旅行する一家でもありませんでした。
  じーちゃんとばーちゃんは旅行が好きで、さいさい出かけていた記憶がありますが……
  それでも最近母に聞いたところだと、出かけてもイイトコ近畿一円程度で、
  それほどの遠くへは出掛けない列車旅だったらしいから、
  そのような事情とは無縁であったでしょう。
  子ども心に、色んな所へ旅行に行っているなあと思っていましたが、
  旅行、というだけで「とても遠くへ行く」というイメージしかなかったものだから、
  たくさんの知らないものを見てきているのだろうと思っていたけれども、
  母に聞いたところだと、北海道へも行ったことはなかったはずだと言っていました。

  ちなみにこれから向かう忍野八海へは、
  ヨ氏がまだ幼かった頃に訪れたことがあるらしいのですが、
  彼がまだ10歳に満たなかったというから恐らく四半世紀ほど前のハナシ。
  今ほど自動車のさまざまなアシスト機能も充実していなかった時代に、
  道志みちや大菩薩ラインを使って旅をしたヨ氏の父君の世代のドライビング技術と車との一体感とは、
  今とは比にならないくらいだったのではなかろうか。
  閑話休題。

朝食を摂るため、ほど良く視界のひらけた場所にジェントル号を休ませ
雄大な裾を広げるおフジ山を眺めつつサンドイッチにありついていると、
土地の持ち主らしき御仁が辺りをうろつき始めたので怒られる前に退散を試みます。
そう、怒られる前なら違反でも違法でもありませぬゆえ(そんなルールはない)。

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デ、忍野八海に着いてみて、驚いた。
まだ10時を回ったばかりだっちゅうのに、なんでありましょうかこの人出は。
ザ・アクセスし辛い観光地100選で堂々第一位(※)に輝いた忍野八海さんだというのに、
人また人。

  ※オイサン観光研究所調べ。
  実際、富士山周りはクルマ持ってないとアクセスが非常に困難です。
  新宿からバスが出ていたりしますがイチイチ都心まで出るのもかったるく、
  それらのバスには途中八王子辺りから乗れたりもしますが、
  その乗り場がまた、町から外れた高速道路の途中みたいな場所で
  そこまでもクルマで行く必要があるみたいな場所デ本末転倒。

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その行きにくい忍野八海さんへも、
甲府からなら1時間チョイで着くことが出来てしまって驚いた……というのに。
時間的に、クルマを駐車場に入れられないという事態は回避できたが、
もう30分、否、15分遅ければそれもあり得たかも知れない、そのくらいの人の数でありました。

マこの日からGWさんも本気でしたので致し方ないといえばその通りなのですが。
お前らもっとヨソに行けよ(勝手)。

前にも少し書きましたが、
忍野八海さんの駐車場システムは民間の協力を得て成立しているようでした。
付近の民家の方々の敷地に一台おいくら(どうやら一律300円)で停めさせてくれます。
誘導もその家の方々がおやりになっているようでした
(もしかしたら当番制だったりするのかもしれないが)。

  けれども、
  あれだけ大量のクルマが押し寄せてくるとなると、周りの環境への影響も大きかろうと思う。
  騒音にしろ、空気にしろ。
  あと、危ない。道も決して広くはないし。
  お年寄りや子供が多そうなので、その辺どう思ってるんだろうなと、
  押し寄せた側の身でありながら少し心配になる。

    フーゾク店に行って女の子に「こんな仕事はよくない」と説教するオッサンのようだ。
    フーゾク店行ったことないけど。

  「駐車場は町のもっと大外にまとめて用意して、そこから先は歩きでないと入っちゃダメ」とか、
  整備出来ないもんだろうか?
  ……などとは、ヨソ者が善意という名の暴力で要らぬ浅知恵を働かせると
  ロクな結果にならぬのでクチが裂けても言わないが。書くだけ(屁理屈)。
  あの駐車場料金で結構な稼ぎを得ている古くからのゴーツクご老人なんかも多そうだし、
  余計なことを言ったら刺されかねない。
  長い目で見たらどっちがいいんだろうかね。
  あからさまな観光地化を整備をすることが良いとも決して思わないし。
  地元の人たちが「地元」であることを維持しながら、
  やれる範囲で必要なだけ進めていって、ダメになったらもう来んな!
  っていうのが正しい姿なのかもしれぬ。日本全国遊園地化は好きじゃない。

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マそんなオトナっぽい事情話はともかく。
水、景色。
驚くほど美しかったです。……そこから人を差っ引きたかったけど。
平日の早朝とかに、もう一度行きたいですなあ。
特に、中心の見どころである、水深8mだかの湧水池は神秘的で、
しかしちょっと、やはり遊園地化が、しかも「日本の古き観光地化精神」が進んでいて、
演出過剰・サービス過多な感じがちょっとあって……
なんでしょうね、「ドヤ感」は否めなかったように思った。
思い描いていたのとは、ちょっと違いました。
もっと自然なまま、放置され、のんびりした場所だと思っていた。
小諸の、弁天の清水みたいな。

あの辺り一帯には、恐らく富士のお山からの水がワンサカ湧き出ているポイントなのだろうから、
もっと端っこまで行って探せば、地元のヒトしか見ないような美しい場所が隠れているのだろう、
とは思う。
それを探しに、あの辺をブラブラするのは楽しいかも知れません。
観光の中心から外れていく流れていく小川の風景に、より心を惹かれたオイサンです。
あの小川沿いを散歩したかったゾイ。

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■2日目:忍野八海 名泉そば製麺所


サテ諸君。
お昼ゴハンの時間です。生存戦略しましょうか。

時刻はまだ11時を回ったばかりでしたが、
恐らくこのGWに日本で一番人が集中しているのであろうこの忍野八海(オイサン調べ)では、
目につく食堂らしき食堂、食べ物を提供する施設は既に人であふれかえっている。
比喩でなく、本当に人であふれかえっているのでした。
溢れちゃってもう、噴きこぼれて火に落ちて死ねばいいのに。
おっといけない、人ごみに晒されて心が荒み始めているぞ、スマイルスマイル。

朝メシのこともロクに考えられないダメな大人の我々は、
当然昼ゴハンのことなど何も考えずに来てしまっていました。
どこか適当に何か食べられる場所はあるまいか……と考え始めたところに、
我らがエースが鼻を利かせ始めました。
むむっ、どうしたヨ氏、なにか考えがあるのかね。

  ヨ氏「子どもの頃の記憶なんで、曖昧なんですけど」

ヨ氏がいうことには、
なんでも20年近く前に家族でここを訪れたときに行ったおそば屋さんがあるのだそうな。
その店は観光の中心地からはそこそこ離れていたので、
もしかするとそこならそんなに混まずに済んでいるかもしれない、という。
ウム分かった、他にアテのあるでなし、ここはヒトツその言葉を信じようではないか。
そもそもからして、我らが食い意地モンスター・ヨ氏を育てた素晴らしき血族が、
20年もの昔……食べログはおろか、まだホットペッパーもぐるなびもインターネッツすらロクにない時代に、
食い意地とすきっ腹と鼻だけをたよりに嗅ぎ当てた
店である、
ひいき目に見ても(間違った日本語)不味いハズはない。

  ……ホメてますよ? もちろんです。
  完全に褒めている。

そんなこともあって、ヨ氏の記憶だけを頼りに、村のハズレへ向けて歩き出した。
「こっちの方だと思う」
「プレハブっぽい建物だったような」

歩きながら、断片的に甦るヨ氏の記憶……
果たして自分に10歳の頃に訪れた観光地の記憶がどれほどあるかと言われると、
正直全く自信がない。

  10歳のころと言えば、家族で城崎(きのさき)に旅行をした記憶がある。
  しかしあるのはそれだけだ。
  なぜ城崎だったのか? 季節はいつだったか? 何で行って、何を見、何を食べたか?
  全く覚えていない。
  唯一憶えているのは、夜の旅館でトランプをし、
  負けて罰ゲームに正露丸を食べさせられたことくらいだ。
  城崎に皆で旅行をしたとして、「何がうまい?」「正露丸」ではシャレにもなるまい。
  まあ今なら、ブログに面白く書ける自信はあるが。
  閑話休題。

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クルマもすれ違えないような細い道をつらつらと歩いていくと、
突き当たった右手、富士山を背景に借りた手前に、なるほどそれらしい建物がある。
プレハブでこそないが、決して立派ではない、立ち食いそば屋のような建物だ。
あれじゃないっすかね、とヨ氏も半分ほど確信しているようだった。
すごいな。本当にあったぞ。
しかし残念ながら「空いているかも」という予想はハズレで中は満席、
2、3人立って並んでいるようだ……そして表の貼り紙の意味が俄かには理解できず、
三人とも「本当にここで食事ができるのだろうか」と、首をかしげてしまった。
何しろおもてには、

  ・ここは食堂ではありません。
  ・製麺所であり、そばをお土産として販売している店舗です。
  ・お買い上げいただいた方に、サービスとして麺を茹でて提供しています。


……といった旨のことが書かれてある。
これは果たして、どういうトンチであろうか?
中にはカウンターで席が10ほどあり、お客が座って、うどんと蕎麦をすすっている。
取り敢えず中に入ってみて、すこし情報を集めてみたところ、

  ・ここは確かに、食堂ではないらしい。
  ・製麺所であり、土産のそばとうどんが買えるらしい。
        それぞれそこそこの量が540円だ。
  ・お土産のうどん・そばを買った人だけが、
        カウンターに座ってうどん・そばを食べることが出来るらしい。


ということが分かった。
おk、ほとんど情報が増えない。お店の人の話を聞いていても、それ以上わからないのだ。

  ヨ氏「……アレじゃないですか、買ったお土産をここで茹でて食べられるシステムじゃないですか」

いいぞヨ氏、私もそう思っていたところだ。
いずれにしても、ここで食事を済ませるつもりなら、
どういうシステムであれあのお土産そばを買わねばならないというのであれば、
買おうじゃありませんか。
テ氏とヨ氏はどうやらおそばをひと箱、オイサンは太いうどんをひと箱買いました。
ひと箱、けっこうずっしりあるなあ。
おそば・細いうどんではどうやら200gずつ7束ほどが入っているご様子。

  ちなみに太うどんはサンプルがなかったため中の様子はわからなかったのですが、
  家に帰って開けてみると、束にはされずに箱一杯ギッシリと、
  野太いうどんが詰め込まれておりました。大した密度です。

買ったブツをそれぞれ手渡され……カウンターに座ります。

  ヨ氏「買ったのを茹でてもらえるんじゃないんだ?」

おいヨ氏、言ってたことと違うじゃないか! 困るぞそういうことじゃ。
実際食べてみて……否、ここで買い物をしてみて最終的に分かったことは、

  ・ここは食堂ではない。
    その証拠に、料理の注文をすることは出来ない(勝手に出てくる)。
  ・製麺所であり、そばをお土産として販売している店舗である。
  ・そば・うどんをお土産として買うと、サービスにそば・うどんを食べさせてもらえる。
  ・ここで食べられるそば・うどんは、お土産に購入したものとは別である。
    購入分はそのまま持ち帰ることが出来、それに+αして
    一人一人前(おそらくそば0.5人前・うどん0.5人前)を、茹でて食べさせてもらえる


……というシステムである、ということでした。
 ? ? ? ? ?
つまりなんだ、一人前買うと、一人前無料で食べられる、ということか???
それは奥さん、お店的にはワリカシ大変なことなのでは???
だってお店的には、一人前分のお金をもらったら、二人前商品が減るってことでしょ???
これには敏腕マネージャーのテ氏も首をかしげるばかり。

  「一体どういうマネタイズシステムになっているんだ」
  「誰がアグリーしたんでしょうね」
  「KPIはどうなっているんだ」

などと、意識の高い我々の間ではついうっかりランチミーティングが開かれ
ディープなディベートがビギンしてしまうのでありましたが。
「30年前からずーっとこんな感じでやってるからねえ」とは、女将さんのコメント。
まあ30年値段が同じってことはないと思いますが、どうやらそうらしい。
ヨ氏が、20年前にも自分はここに来ているはずだと言うと、
「あーじゃあきっと会ってるかもねえw」
と、こともなげにおっしゃる。まさか彼女が、甲府三人目の賢者なのか。

  「はい、喧嘩するんじゃないのよー」

と彼女は、
奥から、テ氏・ヨ氏・オイサンとカウンターに並んで座った我々3人の間に、
うどんとそばの乗ったザルをそれぞれ1枚ずつ並べていく。

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なるほど、これを3人で分け合って食べろということらしい。
そんな風にネタ振りをされたら、お答えしないワケにも参りますまい、
「お、そういうことならいっちょおっ始めますかw?」
と軽くうでをまくって乗って見せると、これまで出会った2人の賢者同様、
まあさすがソバ屋の看板娘と言いますか、つるつると滑らかに流れるトークを展開なさる。
  「あ、じゃあテレビが事情聴取に来たら私が応えよう。
   『最初は仲良さそうに食べてたんですけど、なんか急に殴り合いを始めて……』」

  「おお、こりゃメガネの一つも割らないと帰れそうにないですなw」
  「あ、これ、使わない?」
と出されたのは、このお店オリジナルなのか忍野ではメジャーなのか知りませんが、
薬味の唐辛子味噌。ワサビやしょうがじゃないんだ。
  「辛くておいしいんだけど、使わない?
    お子ちゃまだから? 辛いのだめ?」

……なんで、チョイチョイ煽ってくるんスか。
デフォルトで指がR2ボタンにかかってません?(わかりにくいたとえ)
ああ食ってやるよ! 辛いのなんか平気だよボクもうおとなだから!
とばかりにその唐辛子味噌をそばつゆに溶いていただいてみると、
これがまた何とも言えず美味しい。
これも売っているらしいので、あとで買って帰りましょう。

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……と、ここでもまあ色々と、なんだかんだおかしな会話に花を咲かせはしたものの、
やはり何よりインパクトを放っていたのは謎のビジネスモデルでありましょう。
お土産一つ分のお値段で、お土産と、おそば一人前がいただけてしまうリーズナビリティ(そんな英単語はない)。
店を出てからも、テ氏はしきりに首をかしげておられた。

  「あれで……成り立つんですかね?」
  「まあ……30年やってるって言ってますしね。成り立つんでしょうね」
  「ちょっと気になるから、向かいのソバ屋の値段見ていきましょう」

さすが、敏腕Pは市場リサーチも怠りません。
この名泉そば製麺所のお向かいにあるおそば屋さん、
あえて店名は伏せますが(調べたら一発じゃねえか)、もりそば一枚700円弱。
お土産が付かずにこのお値段です。
名泉そば製麺所さんは、お土産のおそばが、7食分入って540円、
それにおそばとうどんが合わせて一人前いただけてしまう……。
なんという価格破壊行為、
これでは明日にもMIB(麺・IN・BLACK)に目を付けられて、
姫ノ宮ざるそば(かわいい)ちゃんの様に拉致監禁されてしまうやもしれませぬ。

   『ざるそば(かわいい)』、MF文庫Jより絶賛発売中!
         
   とっても面白い!


まあまあくだらない冗談はともかく、そのくらいおトクで美味しいお店だったということですよ。
とりわけテ氏はご満悦で、食後のおタバコをふかしながら空を見上げて
  「いっや~……イミ分かんねえもんなあ……
   クッソうまかったなあ~……絶対もう一回こよ」

としきりに呟いておられました。

あ、料金システムのおかしさばかり書いてしまいましたけど、
おそばもおうどんも、とびぬけて美味しいです!!
素晴らしい歯ごたえにのど越し、ほのかな粉の香り。
つやっつやのもっちもちで、麺類は、ここまでなめらかになれる! 全米が茹でた! と、
もしあれが麺類ではなく美少女だったら求婚しているところです。
あぶないあぶない。
個人的にはうどんのインパクトが強かったですが、テ氏はおそばの方をお好みだったご様子。

あとを引く美味しさで……あのね、食堂じゃないのが惜しい。
おかわりや大盛りが注文出来ないだもの。
「お土産を買ったら、一人前食べさせてもらえる。サービスで」。
それが、名泉そば製麺所のオキテなので。
家で茹でても……やっぱりねえ、ああは行きませんでしたね。
おいしさにいたく感激して「いや絶対また来ますよ!」と口走るテ氏に、
  「あっはっはw でも、次来てもあたしもういないかもしんないしw
      いても、一か月以内じゃないともう、ホラ、忘れちゃうからw!」

と、どこまでも威勢のいいおっかさんでありました。
もう……ねー。
30年。
30年、ああして、富士山に見守られながら、そこのお水でおそばを茹で続ける暮らしというのは……
単調なようでいて、
変わり映えしないようでいて、
それなのに、想像を絶します。
そこに宿る時間の凝縮した壮大さに、なにやら軽いめまいを覚えるまだ目覚めきらない忍野の春ですよ。

まあイマドキ、普通に生きていれば30年くらいは同じことの繰り返しで過ぎていくのでしょうし、
あながち特別なことではないのでしょう。
しかしだとすると、これと同じことが日本中で起こっていることを思うと……
あらゆるの人生のあらゆる毎日が、貴重で偉大なことなのだと思います。
なんてことないんですよ?
なんてことないんですけどね。
けどそれを、淡々と、黙々と、
「あー今日も終わった終わったー」
なんつって、
来るともしれない明日を今日のうちに乗り越えてしまうような営みというのは……
なんでしょうね、
その明日をまだ知らない私たちには、明日へ向けて今日を生き抜くための、
大きなヒントであるような気も致します。
大きなうねりや変化もあったでしょうに、それを、グッとこう足の裏で地面にかみついてですね、
「いや、でも、今のままでいいんじゃね? 明日には元に戻ってるでしょ」
なんつって、罪もなく、あと一日、あと一日と積み重ねていく姿の、
なんと逞しく、強かでで、靭かなことか。

人生には同じ日は一日としてない、というけれども、
そんだけあったら2、3日は同じ日があるかも知れませんよね。
そんな気もしてまいります。そんな人生も、すごくいいと思うよ。安心しますよね。


■2日目:道志みち~道志村の温泉~旅のおわり


最後に忍野八海をぐるっと一回りしてジェントル号の待つ駐車場へ戻り、
またあのバア様の素晴らしいマニューバに誘導されて出発する。
ここから先は道志みちに乗っかって、首都圏まで帰ります。

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途中、道志村の温泉に立ち寄ってひとっ風呂浴びる予定。
昨晩はあまりしっかり湯に浸かれなかったので、そのリベンジを果たすのです。

道志みちは以前、湘南のシャイボーイの運転するクルマに乗せてもらい
パパさんと一緒に富士のふもとまで走ったことがある。
その時はあいにくの雨で富士山のお姿はロクに拝めずじまいだったのだけれど、
帰りの山の上では晴れて、夜空を移動するISSがよく見えた。

そんな、以前も走ったことのある道志みちだったが、
記憶していたよりも右へ左へ、ぐりぐりと車体を振り回されて
思いのほかトリッキーだったことを思い知らされた。
前半の牧歌的な風景の印象ばかりが強く残っていたらしい。

……。

これより先は大きな出来事もなく、
オイサンのたよりない案内でもどうにか道志村の銭湯に辿り着くことが出来、
湯に浸かって、すんなりと津久井湖へ抜けて帰り着くことが出来ました。

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たのしい道志みち。けど、こんなに大変な道だったっけかな。


道志の湯では、
以前あった一人用の露店桶風呂がどうやらなくなってしまったらしく残念ではあったけども
昨晩の仇を打つようにたっぷりと湯に浸かることが出来、
温泉の前を流れる渓流辺りで戯れて再び出発した。
ふむ、同じ山梨でも、このくらい富士や甲府から離れれば、仙人を生み出す謎の波動は届かぬらしい。
人は多かったが、これといって危険なオーラの人物に出くわすことはなかった。

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しかし、大変な旅でありましたよ、エエw

……どうなんでしょうね、コレをお読みの皆さんも、
旅行のたびにこんな色々、面白いメに遭うのでしょうか。
これが普通なのかなあ、と……不思議な思いに駆られます。
「これで合ってるのかな」と。
マどうってことないといえば、どうってことないんですよ。
多分。
観光地の茶屋でケッタイなバア様の世間話につき合わされて、
奇ッ怪なメシ屋で濃い味付けとたいがいな分量にやられ、
独特なシステムのよくわかんないソバ屋に迷い込んだ、
っていう……だけなのかもしれないんですけどね。
普通はイチイチそれに付き合って、
30分も話を聞いたりしないとか、
「……味が濃いな。あと量が多い」で済ませるだけなんだと思います。
ゲラゲラゲラゲラ、たくさん笑ったんだけども、
我々の、これらを楽しむ心が常軌を逸している部分もあるんでしょう。
同じ行程を辿ったって、不愉快になったり、イライラしたりする人も、きっといるでしょうしね。

路傍に咲く花をいかに愛でるか……そんな、ワンランク上の旅をご提案。

  マ我々の行く先々にはなぜか毎回、
  ラフレシアがガッバガバな匂い振りまいて咲いてるんだけどな。
  「くっさ!」「くっさww!なにこれww!」
  みたいな。

しかし、それを冷静になって振り返ったあとでも、
心に残る特別な部分が今回の旅にはあったと感じている。

50年、山の上で仙人やってるお婆といい、
44年、町なかで味の濃いハンバーグで人々をBigりさせてるご夫婦といい、
30年、富士山のふもとで謎の経済システムに則りおそばを茹で続けているおっかさんといい……
一体いつ、どこで、どんなタイミングで。
その時間を過ごす……人生を全うすると決めたのだろう。
その時間に納得がいくことを、どうやって確かめたんだろう……。

「これでよいのだ」と。

あんな道もあった、こんな恋もあったと、思うこともあるだろうに、
どんな手がかりや肌ざわりをもって、衰えた自分の時間をよしとしてきたのか。
何か筋道があったのか、気が付くといつの間にかそうでしかなかったのか。
ヒトの在りようとは、さりげなく自然であるようでなんと凄まじいものかと、
しみじみとオミマイされるオイサンなのでした。
実は人生なんていうのは、
否、
人生に限らずすべての時間というのは、
結果から逆さに流れているのかも知れません。
山梨・甲府という土地柄が、人をそういう風に育むのかもしれない。

あんなどっしりしたものに近くで見守られていたら、
何をやったってどうにかなる、なんてこころ安くおられるのかもしれないと、
トムソーヤーを育んだミシシッピよろしく、
初夏の雲にかすむ富士山を心によみがえらせるオイサンです。

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のんびりと、陽気に、力強く。
オイサンでした。
 
 
 
 
 

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